中国地方でビニールハウスを活用した陸上養殖の事例

中国地方における陸上養殖の概要

陸上養殖とは

陸上養殖とは、海や川ではなく陸上に設置した水槽や養殖池を用いて魚介類を育てる養殖方法です。水温、水質、光などを人工的にコントロールできるため、自然環境に左右されずに計画的な生産が可能です。また、病原体や外敵の侵入リスクを低減できる点も大きな特徴です。

中国地方の特性と陸上養殖

中国地方（鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県）は、瀬戸内海と日本海の両方に面し、多様な水産資源に恵まれた地域です。しかし、気候や地形の影響で安定した養殖が難しいエリアもあり、陸上養殖への関心が高まっています。特に、ビニールハウスを活用した養殖は、低コストで始められ、季節や天候の影響を受けにくい点が評価されています。

ビニールハウスを活用した陸上養殖のメリットとデメリット

メリット

低コストで設備導入が可能：鉄骨造に比べ、建築費が抑えられる
水温管理がしやすい：ビニール越しの太陽光で加温でき、省エネにもつながる
レイアウトの自由度が高い：敷地に合わせた水槽配置が柔軟に行える
耕作放棄地の有効利用：農業施設の転用にも向いており、地域再生に貢献

デメリット

保温性が低く、冬季対策が必要：ヒーターや断熱材の追加が必要なケースも
結露による建材劣化の懸念：湿度管理を怠るとカビや腐食の原因に

中国地方のビニールハウス陸上養殖事例一覧

地域	養殖対象	特徴
鳥取県米子市	チョウザメ	観光農園と連携しキャビア販売も展開
島根県出雲市	ウナギ	温泉熱を活用した加温養殖
岡山県倉敷市	シジミ	地元河川水を使い清浄環境を確保
広島県呉市	アユ	陸上水槽で回遊行動に配慮したレイアウト
山口県下関市	トラフグ	地元大学と共同研究
鳥取県境港市	バナメイエビ	夏季は自然光、冬季はヒーター補助
島根県松江市	カキ	稚貝育成に特化した施設
岡山県玉野市	ナマコ	藻場再現による自然に近い環境整備
広島県福山市	サーモン	水温をIoT制御で安定管理
山口県山口市	ヒラメ	餌効率を重視した高密度養殖
鳥取県琴浦町	アワビ	閉鎖循環式で水質管理を強化
島根県浜田市	カレイ	地元漁協と連携した地域振興モデル
岡山県津山市	サクラマス	河川冷水を活用し低コスト化を実現
広島県三原市	クエ	太陽熱パネルを併用した省エネ施設
山口県宇部市	シロサケ	稚魚期のみビニールハウス内で育成
鳥取県八頭町	ホタテ	山間部での実証実験を実施中
島根県益田市	ギンザケ	降雪対策として2重張りのハウス使用
岡山県新見市	ハタ	バイオフィルターで水質浄化を実現
広島県東広島市	ブリ	温度変動の少ない地下水を利用
山口県長門市	クルマエビ	地元農家との連携モデル

まとめ

中国地方におけるビニールハウス型陸上養殖は、温暖な気候や地域資源と調和しながら、持続可能な水産業のモデルとして進化しています。特に、小規模事業者や農業との連携による複合経営に適しており、今後も地域経済への貢献が期待されます。再生可能エネルギーやIT技術の導入によって、さらなる省力化と収益性向上も可能になるでしょう。